海外在住あるある「いいとこ取り」できる他人事マインド

海外(外国)在住者の特権の1つは、母国のことに対しても移住国のことに対しても、一歩引いた立場でいられることだ。

シンガポールは一時的な滞在場所という意味で「外国」に過ぎないし、日本だって今住んでいる国ではないという意味では立派な「外国」だ。

だから海外在住生活が本格化するにつれて、どちらの国のことも、他人事になってしまうという、少し恐ろしいことを考える時がある。

日本もシンガポールも「他人事」

そもそも日本で日本のニュースを読んでいたって、自分にとっては直接的影響のない内容が多数だ。得た情報によっては知的好奇心を刺激されたり、心が和んだり、痛くなったりすることはある。けれど日本はあくまで”一時帰国”する場であって住んでいるわけではないとなると、いくらルーツがあったって、そこでの日々の出来事は「あぁなんかやってるな」程度で案外終わらせることができてしまうのも事実だ。

2020年の東京オリンピックは、その時に自分が日本にいる確証すらないため、「その頃はどこにいるんだろうなー」と曖昧な思考で片付いてしまう。

来年度の消費税引き上げに関しては、「うわー日本帰国の回数減らそう」という逃げの思考に走る。

通勤ラッシュ・激務・残業・社畜云々のニュースを受ければ、「うわーシンガポールで働いてて良かったー」と自己中に安堵するばかり。

このように、海外在住生活が長引けば長引くほど、母国に対する責任感のような繋がりも、だんだんと薄れてくるように感じる。

同時に、外国人という立場ではあるが住居を構えているシンガポールでの出来事も、どちらかと言えば隣の芝で起きている感覚に近い。

だって、いつかは去る国だから

私の場合シンガポールに来てからもうすぐ2年経つのに、朝チェックするニュースが未だに日本の出来事というのが、容易に証明している。

興味深いのは、シンガポールに移住してから何十年経っている人でも、シンガポール人の話をする時はやっぱり日本人のアイデンティティでものを語るということ。

例えばシンガポールを説明する際に耳タコであるこの3つの文章。

皆んな辛い料理が好きなんだよ。
英語しゃべってる時、たまに中国語が混ざるんだよね。
2月には大切なお祝いがあって、旧正月と呼ばれているんだ。

主語が省略されがちな日本語だが、あえて英語にしてみると話し手の立場は明白だ。

We They like spicy food.
We They often mix Chinese when speaking in English.
We They have a special festival in February, and we they call it “Lunar New Year”.

こんな風に、自分が滞在している国のローカル人には、無意識で一線を引いていることはあるだろうか。家族や友人にシンガポールのことを説明する時、人称代名詞はあくまでも”They”であって、”We”という意識で形容していないことの方が多いのではないだろうか。

「2月には大切なお祝いがあって」という事実説明にしたって、「シンガポールではね」を枕詞につけているはずだ。「シンガポールではね、2月には大切なお祝いがあって、旧正月と呼ばれているんだ。(日本とは違うんだよね)」という別軸をもって比較できるほど「他人事」なのだ。

両者を自分ゴト化するという選択

では海外在住だと、いつかどの国にも真剣に向き合わなくなってしまうのか?私は両者を取るという選択肢もあると思う。冒頭で「特権」という言葉を使った理由はこれだ。

3年前、4ヶ月だけドイツに短期滞在していた時、よく面倒を見てくれていた友達がいた。オランダ人の父親とフランス人の母親のミックスだが、生まれ故郷はカナダの25歳。3歳でカナダからマレーシアに渡り、小学校半ばからはオランダ、アメリカ合衆国、ドイツを転々としてきた、典型的なサードカルチャーキッド(Third Culture Kid)だった。

“de Regt”というオランダの苗字を持っていて、喉に詰まった痰を吐き出すように高速で「ドゥへぇっ!」と発音しなきゃならないのだけれど、何回トライしても正しく呼べなくてよく怒られていたのを覚えている。

ある日その彼と、オランダ vs フランスのフットボールの試合観戦に行く機会があった。ビアガーデンと化したボン大学の広大原っぱに大きなスクリーンを設置して、ビール片手に屋外で観戦するオープンスタイル。赤・白・青の3色で彩られた人だかりの中で、「オランダとフランス、どっち応援するのー?!」と私が大声で問いかけると、「どちらか一方って決めなきゃいけないルールはないだろー!もちろん両方だよ!」と叫び返された。「政府は両方嫌いだけど、スポーツチームは両方応援してる」らしい。

結果おいしい立ち位置の海外在住

その時にハッと気付かされたことがある。

海外在住生活は、母国と滞在国の両方に関して、良いところはいいとこ取りして、悪いところは距離を置くことができるということ。まさにドイツで知り合った彼が実践していたことだ。

それが良いか悪いかは人それぞれ違うかもしれないが、個人的には、この距離感はめっちゃ楽だとポジティブに受け止めている。

どちらの国の事も他人事になるのではなくて、どちらの国のことも自分に関わってくる情報は取捨選択できるようになれば、人生もっと気楽になれるはずだ。

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本日も最後まで読んでくださってありがとうございました!