多宗教共存を利用したシンガポールの埋め合わせ政策

旧正月の装飾が跡形もなく撤去され、シンガポールにもようやくこれまで通りの日々が舞い戻ってきた。とはいえ今月末には早くも3連休が控えているんだけれども。とにかく国を挙げての大きな行事がやっと一つ終わったことになる。

いや、国を挙げての行事と言えるのか?

旧正月の連休中、確かにシンガポール人の友人は香港や中国本土に住む親戚への挨拶廻りに勤しんでいた。そんな中私が何をしていたのかというと、日本人の友人とカフェで何時間もだべったり、テニスしたり、インド人の同僚と映画を観に行ったり。旧正月は何かイベントに参加しないのか尋ねたけれど、「インド人には関係ないから特にやることはない」らしい。NUSを卒業しシンガポール滞在歴6年目になる彼女だけれど、シンガポールの正月の過ごし方については全くの無知だった。

年間行事でも埋め合わせが効くシンガポール

シンガポールにおける各宗教の比率は仏教(33.2%)、キリスト教(18.8%)、無宗教(17.0%)、イスラム教(14.0%)、道教(11.0%)、 ヒンドゥ教(5.0%)、その他(0.6%)2015年のGeneral Household Surveyより

多民族国家であると同時に多宗教国家であるシンガポールでは、国教として特定の宗教が指定されておらず、信仰の自由は憲法によって保障されている。実際に5月のべサック・デーは仏教、6月のハリ・ラヤ・プアサや8月のハリ・ラヤ・ハッジはイスラム教、11月のディパバリはヒンドゥー教のお祝い行事とバラバラだ。

もう仏教もヒンドゥー教も道教も全部まとめちゃおうぜ!w と1980年代に建てられたLoyang Tua Pek Kong Templeというお寺も存在するほど。

シンガポールの祝日(2018年)

かくいう日本も、クリスマスを祝った直後にお寺で除夜の鐘を聞いて、またその直後に神社へ初詣に行くというある意味宗教に寛容的な国だけれど、シンガポールは少し違う。まず国民はそれぞれの教義に忠実であって、異宗教の祝賀行事に積極的に参加することはない。多宗教からなる年間行事が成り立っているのは、信仰宗教が違っていてもお互いの文化を尊重するという多民族国家ならではの心構えだ。

そのため国の7割を占める中華系民族のためのお祭りごとである今回の旧正月の間は、ホーカー、レストラン、カフェなどの店頭に立っているのはイスラム系あるいはインド系スタッフであることが多い。旧正月に直接的関係のない民族や個人は、正月準備に明け暮れることも、蜜柑を持って親戚中を訪ねることも、アンパオ貧乏になることもないからだ。会社でもシンガポール人と中華系マレーシア人がごっそりいなくなってしまっている間、日本や欧米諸国からの駐在メンバーは通常運転で仕事をしていた。

シンガポール的には「国を挙げた」祝賀行事である旧正月でも、全国民を総動員する必要がない。そうやって多宗教国家シンガポールは、特定の年間行事の際は直接関係のない民族で埋め合わせをし、国家全体が停止しないようにうまく回っているように思う。

いくつものわらじを履くキャリア

この「1つがお休みしていても他が動いているから大丈夫」という埋め合わせ手法は、キャリアにも適用できる。いわば本業がなくなった場合の「バックアッププラン」だ。

最近では「スラッシュキャリア」「マルチキャリア」「パラレルキャリア」と呼ばれるように、いくつもの名刺を持って活躍する人が増えている。副業を公に認めている大企業も、その浸透率はさておき徐々に増えてきてはいるだろう。

二足、いや三足、四足ものわらじを履くことで、仮に1つがダメになったとしても全リスクを負うことがない。「この仕事がなくなっても自分には●●がある」と思えることは精神的余裕にも繋がる。1つがどん底になっていても、他のわらじが絶好調で救われることもあるしね。

これからもゆるりふわりと働いていこう。

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