海外生活が教えてくれる心の幸せを保つノウハウ

初めて日本を出てアメリカに渡った時、桜の木を目にして驚いた。桜は日本にしかないと思っていたから。

空にはいつもカモメが泳いでいる長閑な海辺の街だったけれど、味噌汁も醤油も、スーパーに行けば必ず見つかった。もう食べられないかもと覚悟してトランクに詰めてきたインスタント味噌汁の量を後悔したくらいに。

私たちが普段、日本の文化だと思っているものは、実は日本の外でも見られたりする。私は大学に入るまで海外に行ったことがなく、恥ずかしながら長らく春夏秋冬も、室内では靴を脱ぐという動作も、お辞儀という習慣も、全部日本特有のものだと思っていた。日本の外に出て、日本唯一のものだと信じていたものに出くわした時には驚いたし、それなりにショックを受けたのを覚えている。海外生活をしていると、こうやって自分の当たり前がドカーン!と崩れる瞬間が次から次へと訪れる。

カリフォルニアで1月中旬から咲き始めた桜。

海外生活で増える「譲歩ポイント」

生まれてから高校卒業までのドメスティック生活とは一転し、大学に入ってから飛行機で飛び回るようになった私は、海外生活に関してこう聞かれる事が多い。

海外に行って価値観変わりましたか?

海外生活といっても、私の海外滞在期間なんて全部合わせても3年半とたかが知れている。だから海外生活が私の価値観を変えましたなんて大そうなこと、そもそも言えないんだけど…。

どちらかと言えば「価値観が変わる」というよりも「価値観がはっきりする」という表現の方がしっくりくる気がする。

生活の目的がボランティアであれ、インターンであれ、仕事であれ、自分が慣れ親しんだ住処を離れることは勇気のいることだ。生活の全てが真っ白に洗い流されてゼロからスタートするのだから。でもそのおかげで、自分にとって大切だと思っていたけれど案外気にしなくても良いかもしれないことが出てくる。

海外に出て「価値観が変わった」と思う感覚は、この「譲歩ポイント」=「自分自身の生活習慣で変えられる部分」が明確になることだと思う。

一日一回は食べないと死んでしまうと嘆いていた日本食は、別に2ヶ月くらい口にしなくても生きていける。靴の木を履いたまま部屋に入るなんて汚らしいと思っていたのに、今では逆に靴を脱ぐのがめんどくさい。お湯シャワーはあれば嬉しいけれど、最悪水でも問題ない。ルームシェアにも全然抵抗がないし、5日連続のインドカレーも超余裕だと判明した。

人間関係もそうだ。自分とは背景が違うんだという前提を共有しているだけで、大抵の事には「まぁこういう人もいるわな」と心に余裕を持って接することができる。その結果、昼間っからビール引っ掛けて豚肉のパスタを堪能する、自称敬虔なイスラム教徒のヨルダン人などとも良い友人関係を築ける。

同時に見つかる「死守ポイント」

もう一つ、自分の習慣をぶっ壊す「譲歩ポイント」と同時に見つかるのが、「死守ポイント」だ。譲歩ポイントとは反対に、自分が絶対に変えることのできない習慣のこと。

私の場合、それは自分一人の時間だ。何事も長続きさせるのが苦手な私は、その飽きっぽさゆえに多趣味だ。テニス、写真、ダイビング、読書、料理、将棋、一人酒、美術館巡り、よさこい、合気道、タヒチダンス、服作り、アクセサリー作り、ガーデニング。楽しそうだと思ったものには何でも手を出す。ただし基本的に一人黙々と作業をして、自分の手でゼロから何かを創り出すことに楽しみを覚えるので、テニスや将棋など相手が必要な趣味に長時間没頭することはできない。無性に服が作りたい!!と発狂しそうな時は、もっと根本にある一人になりたいという欲求が生じている時だ。どこにいても、一人になれる時間が取れない日が続くとストレスを感じてしまう。

だから滞在国や職場が変わって、新しい環境に身を置く時でも、人脈作りを急がないということを学んだ。繋がりを増やそうと、無理に出掛けない。疲れている時は素直にお誘いを断る。さもなければ自分自身の首を絞めてしまうから。何より大人数の集まりに顔を出して一気に人脈を広げるよりも、少人数でも丁寧に大切に密な友人関係を保っていく方が自分の性根に合っている。

自分の心の幸せを保つためのリスト

海外に出てよかったと思うことの一つは、こうした「譲歩ポイント」「死守ポイント」をたくさん見つけられたことだ。言い換えるなら、「自分の心の幸せを保つためのリスト」。死守ポイントは貫き通し、譲歩ポイントの許す範囲で生活していれば、国問わずどこにいたってストレスフリーな生活に近づけることができる。

海外旅行に出掛けても、そこで働けるか、そこに住みたいか、こうした生活の可能性を瞬時に判断できるのは、譲歩・死守リストの成せる技だ。自分の常識の範疇外に身を置くことで、果たして自分はどういった環境に適しているか、あるいは適していないか、より敏感に察知できるようになった気がする。

とにかく今は、充実した海外生活を送れていることに感謝している。もしできることなら10代の頃の私に囁きたい。早くパスポート申請して海外旅行行けって。まあでもドラえもんなしでは叶わないのでね…。代わりにこの記事が海外在住を希望されている人の背中を少しでも押せれば嬉しい(=・ω・=)

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本日も最後まで読んでくださってありがとうございました!