写真集 * Photo Walk

世界を旅して写真を撮る「Photo Walk」が好きです。
iPhone 6S Plus、NIKON D5300で、
日常の風景を撮影しています。
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シンガポール農家の未来を牽引する最新テクノロジーと熱き戦い

海外生活

「シンガポールにも、自然があるんだよ。」

こう言うと、ほとんどの人はまず信用しない。

「あー、ボタニックガーデンのこと?笑」

嘲笑されるのがオチだ。

あゝ、哀れなシンガポール。

でも「自然」と言うに相応しいネイチャースポットが存在するのは本当。

実は、国土の約6km2は自然とのふれあいを促進するため農業公園に当てられていて、現在約200もの農園が点在していることをご存知だろうか。

Kok Fah Technology Farm

湿った土壌がつんと匂う。

スーーーーー。

お腹いっぱいに吸い込んだ新鮮な空気を吐き出すのがもったいない。

等間隔に並んだ茶色い凸凹が、遥か彼方まで続いている。

ザクっ。遠くの方で、麦わら帽子のおじいさんが鍬を振り下ろした。烏避けのCDがくるりと回転し、チラチラと白い光を放つ。

草木の髄から溢れ出る青臭さ。

そよ風に混じって、オシロイバナの熟れた香りが漂う。

なんだか草木も活きいきとして嬉しそうだ。

ジリジリと照りつける日差しに張り合うように、ミンミン蝉たちが大合唱を始めた。

近代都市国家の代名詞であるシンガポール像を打破してくれるネイチャー・スポットの1つが、シンガポール西部に位置するKok Fah Technology Farmだ。

過去30年間に渡りシンガポール国内への葉物野菜の出荷を支えている、家族経営の老舗農園である。

シンガポールのビジネス街(=CBDエリア)から、タクシーでおよそ30分走ればそこはもう別世界。

想像以上にのどかな農園風景がお出迎えしてくれる。

農業を支える最新テクノロジー

Kok Fah Technology Farmは、”Technology”と名乗っているだけあって、最新の農業技術でその名が知られている。

日本では食料自給率が40%を切り先進国最低水準に達してうんぬんというニュースが注目を浴びている一方、シンガポールはそもそも自給率を公表していない。

おそらく1割未満であろうと推測されているその内訳のみ公になっており、2017年現在シェアの高い品目から鶏卵(約26%)、魚(約8%)、葉物野菜(約8%)が挙げられる。

チキンライスといい鶏卵といい、ニワトリが感染症にでもかかったらこの国さぞや大混乱になるだろうな。まぁそれは置いておいて。

天災や気候の変化に見舞われることは少ないシンガポール。しかし東京23区ほどの国土しか有さないシンガポール。

そのため農業においては「限られた土地でいかに生産効率をあげるか」が最大の課題だ。

そんな課題に向き合う技術の一例が、Kok Fah Technology Farmに代表されるハイドロポニックス(水耕栽培)。

土を必要としないため、害虫や細菌を防ぎやすい他、温度や湿度といった環境調節が容易になる。

レタスや空芯菜などの葉物野菜は、ここでそれぞれに適した方法で栽培され、なんと苗の植え付けから最短2ヶ月という脅威のスピードでスーパーの店頭まで送り出されるのだ。

土壌栽培の場合も、必要な栄養分や水分はチューブを通して均等に配分されている。

いくつかのラックには「CO2」と明記されたボンベが備え付けられていた。

スピード収穫のために光合成を促しているのだろう。

農家たちに襲いかかる厳しい土地競争

さすがシンガポール!何もかも進んでいるのね!

水耕栽培やLEDライト栽培などは、消費者としては面白い話題。

一方で農園の経営者たちには、シンガポールの農業を牽引すべく大きな期待とプレッシャーがのしかかっている。

彼らにとって、この技術競争はまさに死活問題だ。

シンガポールの農業は上図の通り、北部に散らばっている。

中でも野菜の生産で有名なのが、「野菜マーク」のある北西部のLim Chu Kangというエリアだ。

シンガポール政府は昨年、この地域に対する「競争入札方針」を固めた。

各農家の入札金額や、以下の評価項目を総合的に判断して、農地の契約者を決めようというものだ。

  • 大量生産性 (30%)
  • 生産データ収集力 (30%)
  • 農業関連経験および資格等(20%)
  • イノベーションとビジネスの持続性(20%)

もし競争に負ければ、農業を営む土地を得ることができない。有無を言わせず事業閉鎖。

出荷率ならまだしも入札金額でも農家同士に競わせるなんて、なんともシンガポールらしい。

「国の発展には熾烈な競争がつきもの!(意訳)」という政府の方針がここまで浸透しているとは、つくづく妥協のない国である。

地元民に愛されるマーケット

Kok Fah Technology Farmはそんな農地激戦区からは少し南下した場所にある。

とは言え頻繁に足を運べる人は、車を持っている人か、ご近所さんに限定されるだろう。

辺鄙な立地のせいか、この日の訪問者は偶然にも?地元の人たちばかりだった。

シンガポールのシンボルである蘭の花や、農園名物のアロエも販売されていた。オフィス街では普段5ドルもするうずらの卵は、半額以下の2ドルで手に入った。

市内のホーカーでは食事の栄養価よりも安さと手軽さを求めるシンガポール人たちを目の当たりにしているだけに、できるだけ新鮮な野菜を求める人たちも多いことを知れたのが嬉しい驚きだ。

親子連れの姿も多く、パパやママが一生懸命子どもに野菜の育て方を教えようとしていた。

口にするものはほぼ全て輸入品と相場が決まっているシンガポールだ。

ビジネス街で生まれ育ったら、どのように野菜が作られているかというプロセスを意識することは少ないかもしれない。

実際にCNNでは、野菜が一体どこからやってくるのか理解していない子どものインタビューが取り上げられたほど。

外国人からの「シンガポール産の食べ物なんてないよね?」という誤解も少なくないこの国では、住民に食物の物流を意識させることも、科学技術と並んだ大きな課題なのかもしれない。

Channel News Asiaのインタビューにて。「いつも食べてる食材がどこからやって来るか知ってる?」という質問に「お家!」と即答したシンガポール人男児。

▼Kok Fah Technology Farmへのアクセス▼


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本日も最後まで読んでくださってありがとうございました!