キナバル山には1キロ毎にお手洗い休憩所があるって本当?

旅行記

この世界に水と土と雲と霧しかなかった時代。

コケは地球が最初に着た緑色の着物。

キナバル山登頂ルートの入り口を抜けて早々、永瀬清子さんの「あけがたにくる人よ」という詩集の一編を思い返していた。

なるほど、緑色を優美に着こなした森が呼吸をしている。

足元ではコケが雨粒を纏い、頭上では深緑の樹木が飄々とした威厳を放っている。湿気が多いにもかかわらず、肺に吸い込まれる空気は新鮮で軽い。森林浴ってこういうことを言うんだなぁ。

シンガポールを後にして16時間。我々しんじゃぽりあんは各々約6キロの荷物を背負ってキナバル山登頂のスタート地点(標高1,866m)に立った。

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キナバル山に関しては、前々から至れり尽くせりな噂ばかり耳にしていた。

噂➀ 1キロごとにお手洗いがある。

噂② 途中の山小屋にはWi-fiが完備されている。

噂③ 登頂突撃前にシャワーを浴びられる。

天国かい!いや違う意味で天国に登るかもしれないけど。

とにかく入山するからにはこの3つの真相を確かめばならない!

というわけで、今回は1つ目の噂のお話。

キナバル山入山口から翌日の山頂突撃までの仮眠場所となるコテージ(山小屋)までは、直線距離にして全長約6キロ。そこまでに約1キロ間隔でお手洗い兼休憩所があるという。

ということは休憩所を6つ数えたら、めでたく初日のゴールというわけだ。よし、ならば数えようじゃないか。

キナバル山のルートにはしっかりと舗装が施されている。そのため足に余計な負担がかからず体力を温存しやすい。

スタスタと歩みを進めていたら予想よりもずっと早くに1つ目の休憩所まで辿り着いた。

噂の通り、Tandas(お手洗い)付きだ。

さらに念入りの柵つきゴミ箱まで設置されている。

設備が良いだけでなく、森林観察という点でも楽しめる。すぐそばの木の上で、黄色い身体にエメラルド色の頭をした小鳥が羽を休めていた。ボルネオ島には660種もの鳥類が生息していて、うち約60は唯一キナバル山でのみ観測されているらしい。名も知らないその色鮮やかな鳥が飛び立つと、枝から大粒の雫が跳ね落ちた。

程なくして4つ目の休憩所が現れた。

意気揚々として飛び上がる我ら。4つ目の休憩所ということはスタート地点からすでに4キロを歩き上がってきたということになる。山小屋のある6つ目の休憩所まではあと2キロ!

琴音
早くない?!
よしかつ
2/3か!頂上まですぐじゃん!
ししもん
うぇーい!

さすが日星テニス部メンバー、疲労どころか動悸息切れさえ感じない余裕綽々っぷり。

我らは完全にキナバル山をなめてかかり歌まで口ずさんで森林カラオケ大会を繰り広げていた。

6つ目の小屋が現れるまでは。

希望と絶望の狭間で

キナバル山の景色は行けども行けども変わり映えしない。とっくに富士山5合目の高さを越えているはずなのに、椿やヘビイチゴの低木が茂っている。森林限界が高いようだ。

しかし6つ目の休憩所に辿り着くころにはそんなものはどうでも良くなっていた。

山の天気は変わりやすく、つい数分前まで広がっていた青空はたちまちドス黒い雨雲を運んでくる。幾度となく単発的に降り注ぐ霧雨を浴び、私たちの顔から出発当初の笑顔は消えていた。大爆笑しているのは自分たちの膝のみ。

一刻でも早く休みたい。

そんな時にたどり着いた6つ目の休憩所!

やっと着いた!それぞれに安堵の笑みが戻る。

タバコを吸い鋭気をやしなう者、栄養補給のためバナナを貪る者、放心状態で宙を見つめる者。休憩所での過ごし方は三者三様だった。

周りを見渡し、本日宿泊予定の山小屋らしきものを探す。休憩所の裏からは、岩肌に流木が打ち付けられた即席階段が上へと伸びている。山小屋はこの先だろうか。

念のため休憩中のガイドらしき人に尋ねることにした。

How long does it take to the cottage?

すると返ってきた答え。

3hours!

おーおっけー3hours!ハハハ……え、すりーあわーず?

あと、3時間?

マレージョークだと思って笑い飛ばしたかったのだが、すれ違う下山してくる人たちの息の上がりようを見てハッとした。

しんじゃぽりあん一行の表情が天候にも増して一斉に曇る。4人の表情だけで雷雲が出来上がりそうな勢いだ。

慌てて休憩所の看板で標高を確認する。

2,961m。

今日泊まる予定の小屋は標高約3,323m。

しっかり6つの休憩所を通って来たはずなのに。なんかおかしいぞ。

この時やっと気がついたのだが、キナバル山の休憩所は全部で6つではなく、7つだった。

トイレ付き休憩所は1キロよりも短い間隔で設置されていたのだ。現に最初の休憩所Aから2つ目の休憩所Bまでは441mしか離れていなかった。山道で感覚が麻痺していて気がつく余地もなかった。そりゃ余裕だと勘違いしたわけだ!

というわけで「噂➀ 1キロごとにお手洗いがある」は間違いだった。

正しくは、お手洗いはあるが等間隔ではない。

震える足をお供に、しんじゃぽりあん一行のキナバル山旅は続く…(=・ω・=)

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本日も最後まで読んでくださってありがとうございました!

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