東南アジア最高峰キナバル山の快適な山生活

東南アジア最高峰キナバル山登頂の旅は登山距離を勘違いしてぬか喜びをするというショッキングな事件が起こってから約3時間が苦行だった。

予期していなかった7つ目の休憩所(2,961m)から仮眠を取れる山小屋(3,323m)までの道が初日のラストスパート。

まず、もう終わったと思った道が3時間追加で繰り返されることに大きな精神的打撃を受けた。さらに今まで細かな歩幅で登ることができていた登山道が大きなゴツい岩肌に豹変し、足の筋肉を酷使していった。よしかつ(@4shikatsu)さんの顔には影が差し全く発言しなくなってしまったし、ししもん(@shishimong)さんは過去数時間しきりに「疲れた」しか呟いていない。

相変わらず森林限界を超えてはいなかったので、樹木が雨や直射日光から守ってくれたのは幸いだったけれど、これは、辛い!

時刻は午後16時頃。

この後のスケジュールは、早朝2時に起床、そして2時半に山頂へ向けて出発。いかに素早く食事をとって十分な睡眠を取れるかが登頂の鍵を握っている気がした。

とはいえキナバル山に関する情報は、どれも至れり尽くせりな噂ばかり。特に山小屋に関してはお手洗い休憩の噂に加えてこんなことを聞いていた。

噂② 途中の山小屋にはWi-fiが完備されている。

噂③ 登頂突撃前にシャワーを浴びられる。

本当だとしたらかなり快適な山生活を送れることになる。

レストハウスからの眺め

キナバル山の山小屋

朝9時頃に入山してから歩き続けること約7時間。午後16時半頃、やっとこさ仮眠を取る山小屋(レストハウス)までたどり着いた。

山小屋といえば質素で娯楽のカケラもないイメージ。

勝手に寝袋での雑魚寝や穴の空いたボットン便所を覚悟していたんだけど、実際は驚くほど快適だった。

深夜2時半の出発までしばし休憩をとる山小屋(3,323m)

山小屋(レストハウス)の玄関

カラフルな廊下

1階の食堂と2階の部屋を繋ぐ階段

太陽光がたっぷり注ぐ食堂

えーと、ここは天国ですか?

チェックインカウンターでは鍵を受け取ると同時に、大きなバスタオルまで支給された。

必要な食料はカウンターで購入することもできる。ペットボトルの水、カップラーメン、パンを始めメントス、ポテトチップス、tictac(フレッシュミント味のタブレット)、そして極め付けに冷えたビール!山でビール売ってるなんて初めて聞いた!というかこんな高所で飲んだら高山病になってしまわないのかしら…。

とても標高3,300mの施設とは思えない充実っぷりだ。

肝心の「噂」その②「途中の山小屋にはWi-fiが完備されている」についても聞いてみた。

はろー、do you have wi-fi here?

NO.

ものの3秒で検証終了w

さすがに山小屋にまでwi-fiが通っているわけがなく、しっかりと俗世から離れた2日間を余儀なくされた。

But you can have a shower.

おぉ!

どうやら噂その③「登頂突撃前にシャワーを浴びられる」は本当らしい。

汗で体が冷えて仕方ないので、部屋に荷物を置くなり女子シャワー室へ直行した。

山小屋にはヒーターが設置されておらず、標高が高いだけあって室内も寒い。冷たいタイルの上に直足で立つことさえままならず、真っ裸にビーチサンダルという実に怪しい格好でシャワーをひねった。とりあえず汗を流そう。

しかし!!

飛び出してきたのはただの氷水!

ひぇ〜!寒い!というか冷たい、いや、痛い!

待てども一向に水温が上がる気配はない。赤と青の温度切り替えを何度も確かめる。きちんと温かい方になっているはず。浴びるべきかな。1日だけなら我慢できるかな。いや流石に臭いか。でも浴びたら心臓止まりそうだな。水出しっぱなしのノズルを片手に躊躇すること数分。意を決して頭から冷水をかぶった。そして昇天。

男子シャワー室で綺麗さっぱり汗を流してきたはずの他の3人も凍ったように口を開かない。考えてみれば山奥で温水シャワーは贅沢すぎるよね。このまま空気まで凍りつく前に温かい夕食を食べに行こう。笑

ご飯は全てビュッフェスタイルだった

山生活を支える歩荷という職業

つかの間の滞在とはいえ、山生活が快適というのは重要なポイントである。

山小屋は氷水同然のシャワーを除けば、食事もアメニティも最高だった。スタッフの英語も堪能で、心から安らげる空間が演出されている。道中で約1キロ弱ごとに設置されていたゴミ箱とお手洗い休憩所も、ポイ捨てや立ちションを未然に防ぐための配慮だ。東南アジア最高峰にして世界自然遺産であるキナバル山は、綺麗な場所は汚しにくいという「窓割れ理論」をしっかりと利用しているように思った。

だけど黙っていたって山中に居心地の良い空間が忽然と現れるわけではない。

そこにはやはり人間の手が加わっている。

中でも外せないのが、荷物を背負って山越えをするポーター(運搬人)という職業。重たい木製の背負子(しょいこ)を紐で頭蓋骨に引っ掛け荷揚げをする。つまり森の運び屋さんだ。

ウェイリャン
痛みはないけど時々膝を動かしたら音が聞こえる。

と、シンガポール出発前から不安がよぎっていた彼は1つ目の休憩所に到着する頃には体調不良に陥り、10キロほどもある自分の荷物の運搬ができなくなってしまった。そこで代理で荷揚げをしてくれたのが私たちの登山ガイド。キナバル山で登山案内を生業としている人々は、歩荷でも登頂できる強靭さを兼ね備えている。

キナバル山では大げさでなく数十分に1回という頻度でこのポーターたちとすれ違う。背負い上げているものはジュースの紙パック数ダース、米5キロ、キャベツや人参といった野菜、ガスボンベ15キロなど。標高3,000m付近ですれ違った小柄のポーターさんに総重量を尋ねたところ30キロだと言っていた。

それから全長3メートル程の巨大な漆黒のポール。直径30センチはゆうに超えている。恐らく下水処理に用いられるのだろう。建設材料を運んでいるのも彼らポーターたちだ。

山で温かい食事を取れるのも、洋式トイレがあるのも、シャワーを浴びられるのも、全て彼らの支えがあってこそ。山奥の快適さを実現するために汗水垂らして尽力してくれている人々に心から感謝した。

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本日も最後まで読んでくださってありがとうございました!

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