東南アジアの頂点から見下ろす絶景の空

ピカッという白光と、それに続く空のうなり声で目が覚めた。体全体が重い。そして布団からはみ出した肩が寒い。そうだ、ここはコタキナバル標高3,300m地点にある山小屋だった。

ぼーっとした頭が、徐々に凄まじい雨音を認識する。窓に打ち付けられる破裂音からして外は大嵐のようだ。ケータイに手をかけると「00:17」という文字が浮かび上がった。むむ。これは登頂、難しいんじゃないか?

マレーシア最高峰であるキナバル山に入山してから約7時間。日が暮れる前に山小屋へと到着した私たちは、夕食をとった後、速攻眠りについた。なぜなら更に7時間後(2時30分)には、山頂へのラストスパートと下山が控えているから。

だけど、一度雨音を気になりだしたら再び眠りにつくのは困難だった。

出発まで1時間をきっても雨音は遠のかず、結局あたり一面が深い霧に覆われたまま、午前2時30分のアラームが鳴った。

集合場所にはしっかりと防寒対策をした登山勢が集まっている。どうやらこの悪天候の中でも登頂トライはするらしい。山頂までいけると気分をあげてくれるガイドもいれば、今日は諦めた方がいいと安全第一を掲げるガイドもいて真相はわからない。誰もが登頂への可能性に半信半疑のまま、ご来光めがけて最後の登り道に足をかけた。

総勢100名もの登山者が発するヘッドライトが山の尾根を明るく縁取る。

約4時間で2キロを登り切れば、そこはもうボルネオ島のてっぺんだ。

早朝寝起きということもあってか、出発してから誰一人言葉を発さなかった。その不気味さに耐えられなくなり鼻歌を歌うも、ししもん氏とよしかつ氏に完全スルーされる始末。今にも崩れ落ちそうな細い木製の階段で、時に誰かを抜かし、時に誰かに抜かされ、黙々と両足を前へと出し続けた。

そうやって踏み上がっていくこと2時間。

標高3,600mを過ぎたところで、急に視界がひらけた。

今までの森林が嘘のように、飾り気のない岩肌が広がる。

大雨の中でも根を上げない登山者たちに飽きてしまったのか、いつの間にか雨雲はどこかへ流れ去り、その傷跡を月明かりが優しく照らし出した。空も雲も山も、みんな一つ青白い靄の中へと包み込まれる。

徐々に明るんできた寒空の下、足場の悪い岩場ではロープをたどりながら傾斜を登っていった。星がいくつも瞬き始めた頭上を見上げたら最後、そのまま後方へと転倒しそうになるくらい足の踏ん張りが効かなくなっている。高校生の時に「坂道は後ろ向きで登るといいよ」と教えてくれたテニス部の先輩がいたんたけど、後ろ向きだろうが前向きだろうがカニ歩きだろうがもう全部辛いです先輩…。山の容赦ない試練を甘受する心の余裕は一ミリも残っていない。

そして山小屋出発から4時間。

ついに頂上へと続く最後の砦、心臓破りの崖まで辿り着いた。

ここまでくれば制覇は目前!カラ元気になってテンションが上がってきた。完全なるクライマーズハイってやつ。足の痛みも忘れてしきりに駆け上がった。

快晴のキナバル山から臨む水平線

目下にそびえる山々の頂上よりも遥か上に、青白く大きな弧を描いた水平線を見たことはあるだろうか。

ずっと「見上げる」ものだったはずの空を「見下ろす」という感覚。

足元に広がっているはずの海が、自分の目線より高く広がっている不思議。

マレーシアのてっぺんから眺めた景色は、多分一生忘れないだろう。

山の成り立ちは決して一朝一夕で成し得るものではない。雨が降れば地崩れもあるし、簡単なことばかりでもない。

だけど今自分が立っている人里離れた天空の一点の下に、地球が掃き清めた露とコケの芸術がどんと腰を下ろしている安心感。

頂上から見下ろす世界はあまりに大きくて、そのどこかで生活している自分はとてもちっぽけだけれど、そんな脆弱な生き物であっても全て抱擁してくれる山の偉大さに圧倒された。

登山、楽しい。

これから下山が待っているというのに、もう次に登る山のことを考え出した。

下山する時刻ともなると、山小屋出発前の悪天候が嘘のような快晴が広がっていた。やっぱり日頃の行いが…ごほん。

コラボ記事だよ

今回はたまたま天候に恵まれたけれど、キナバル登頂を成し遂げられたのは何と言っても気のおける仲間たちのおかげだ。普段はシンガポールで集まっている日星テニス部メンバーのししもん氏、よしかつ氏、そしてウェイリャンには心から感謝したい(=・ω・=)

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深夜2時半。ここはマレーシア領ボルネオ島。しかも標高3300mの山小屋である。よしかつ、琴音、そしてワタクシししもんというシンガポールブロガー3人組は、世界遺産キナバル山の中腹で不安そうに天気を伺っていた。漆黒の空からは雨がドバドバ降り続き

道中出会った森の精霊たち。いるところにはいるもんだね。

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本日も最後まで読んでくださってありがとうございました!

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